チャットモンチーインタビュー前篇
(トリビュートアルバム~ニューアルバムに関して)

——7月の完結を前にしてチャットモンチー初のトリビュートアルバム『CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~』が3月28日にリリースされますが、トリビュートを出したいという気持ちはもともと持っていらしたんでしょうか。

福岡:だいぶ前に一度、そういう話をしていたことはあったんです。ふたりになったタイミング辺りかな、5〜6年前頃だったと思うんですけど、ちょうどトリビュート作品がいろいろリリースされていた時期でもあったんですよ。これを自分たちの曲でやってもらったらどうなるのかな、みたいな気持ちは漠然とあって。

——じゃあ、ずっと温めていた、と?

福岡:でも当時は実際に出すような空気がなかったから、温めていたっていうよりは空想で終わったって感じかな(笑)。

橋本:そう、空想はめっちゃしてましたけどね。でも現実的にどうこうというのはないまま、自分たちも忘れかけてて(笑)。

——となると今回のリリースに至る経緯というのは……。

福岡:出すなら今だねって最初に言ってくれたのはディレクターのKさんだったんです。で、私たちは“そういえばトリビュート作りたいって言ってたことがあったな”みたいな(笑)。

——そういうスタートだったんですね。実際、企画が動き出してからはどんな感じだったんでしょう。

福岡:すごく面白かったです。ただ、そこまで詳細に空想してなかったんですけど、昔はアルバム全部を自分たちの好みだけで作りたいと思ってたんですよ。例えばこの人にはこの曲をやってほしいとか、細かいところまで自分たちで決めてお願いしたいなと思ってたんですけど、今回はスタッフにも意見を求めて、気になってるアーティストやバンドを提案してもらったりしながら、自分たちの希望と半々ぐらいのバランスでオファーすることにしたんですね。そのほうがより作品に広がりが生まれるんじゃないかと思って。

——たしかに見ただけでワクワクするようなラインナップですよね。そもそもお2人はトリビュートアルバムというものにどういうイメージを持ってました?

橋本:正直に言っちゃっていいですか?

——どうぞ、どうぞ。

橋本:やってもらった人、今回でいえば私たちがいちばん嬉しい品物っていうイメージがあったんですよ。私たちも(奥田)民生さんやウルフルズのトリビュートに参加させてもらったことがあるんですけど、そのときも自分たちが楽しいのはもちろん、民生さんやウルフルズのみなさんに喜んでもらえるかなっていう気持ちを少なからず持ちながらやってたところもあって。だから普通のアルバムとは全然違う、おそらく本人たちがいちばん嬉しいであろう作品っていうイメージだったんですけど。今回、実際にトリビュートしてもらったら、まさにそのイメージ通りでした(笑)。

福岡:私、いろんなアーティストやバンドのトリビュートアルバムを聴くのが好きなんですけど、聴いていて思ったのはちょっと実力テストみたいだなって。テストっていうと語弊があるけど、そのバンドがトリビュートする相手に対してどうアプローチするのか、みたいなところが楽しいんですよ。素直にいいカバーだなって思うアプローチもあれば、概念から変えていこう、みたいなやり方をする人もいてすごく面白いなって。

——ご自身たちがトリビュートされる立場になった今回、各アーティストの方から届いた楽曲を聴いたときっていかがでしたか。

福岡:いちばん最初に聴いたのがHump Backの「湯気」だったんです。聴いた瞬間、私もえっちゃんも何も言えなくなっちゃったんです、照れくさ過ぎて(笑)。あまりにストレートなカバーをいちばん最初に聴いたので“どうしよう、毎回こんな気持ちを味わうんだろうか”って(笑)。

橋本:もう、ドキドキしたよな。

——自分の書いた手紙を目の前で朗読されるような感覚ですかね。

橋本:そうかもしれない。しかも過去の手紙を(笑)。

福岡:「湯気」はデビューしてすぐのシングルに入ってる曲で、なんならデビュー前から持ってた曲だから自我がすごいんですよ。カッコよく見せたいとか、そういうものも曲の中にいっぱい混じってるから、気恥ずかしさが先に立つというか(笑)。自分たちの曲をトリビュートしてもらうってエラいことだなっていう衝撃がありましたね。

——当時の自分たちがフラッシュバックしてきたりも?

橋本:めっちゃありました。当時のいろんなことをありありと思い出しましたね。こういうストレートにカバーしてくれてる曲は特に。

——そういう話を伺っているとつくづくトリビュートされるバンドになったんだな、と。

福岡:ホンマありがたいですよね。しかも今回、みなさんが選んでくれた曲のうち、半分がシングル曲じゃないんですよ。アルバム曲とカップリング曲で半分が構成されていて、そういうところにもメッセージ性を感じるというか、私たちに対して“聴いてましたよ!”って伝えてきてくれる感じがして。

——ホントどの曲もチャットモンチーへの愛情が溢れ出てますよね。

橋本:すごく思いました。今回、参加アーティストの一般公募もしたんですけど、応募してくれた人たちの曲を選んでるときにもめちゃめちゃ実感しましたね。

——そうそう、一般公募というアイデアはどこから?

福岡:純粋にいろんな人に参加してもらえたら面白いんじゃないかなと思ったんです。具体的にはKさんが進めてくれたんですけど。

ディレクターK氏:チャットモンチーの曲がどう受け入れられていたのか、やっぱり気になってたんです。軽音楽部ですごくカバーされているって前々から耳にしてましたし、スコアブックも好評なので、世に出ているアーティスト以外にもカバーしてくれる人がいるんじゃないかな、と。募集期間はそんなに長くなかったんですけど(2017年11月27日~2018年1月9日)、すべてネットで完結するので昔より垣根も低いだろうし、そういうのも含めて面白いんじゃないかと思ったんですよ。結果としてやってよかったです。

——1ヵ月ちょっとで645組の応募があったそうで、その中から2組が参加アーティストとして選ばれた、と。ちなみに今回の全16組の中で特に意外な選曲などはありましたか。

橋本:全部、意外だったかも。忘れらんねえよの「ハナノユメ」はめっちゃ納得できる選曲だったけど、CHAIの「Make Up! Make Up!」とか目の付けどころがすごいなって思ったんですよ。自分たちの土俵にちゃんと乗っけて、懐かしい曲を見事にイマドキのオシャレな曲にしたなっていう印象がすごくあって。ねごとの「シャングリラ」も意外でした。

福岡:私は逆に納得できるなって思うほうが多くて。CHAIも「Make Up! Make Up!」はまさにピッタリやなとと思ったんです。わりと女の子のコンプレックスをテーマに歌ってる子たちやからバッチリやなって。あと、集団行動も“らしいな”ってすごく思いましたし、きのこ帝国も「染まるよ」できそうだなって思ってたら、本当に選んでくれてましたし。意外なのはギターウルフでしたね、ダントツで。

——「東京ハチミツオーケストラ」か!と。

福岡:でも聴いたら、これ以外にないってくらいハマってて、すごいなって。あとユアソン(YOUR SONG IS GOOD)の「バスロマンス」が当たり前なんだけどインストで成立してて、それが意外というか、こんなふうにもできるんやって思ったんです。チャットの曲にすごく幅を持たせてくれたなって。

——これだけ個性豊かだと曲順を決めるのもかなり悩みそうですが。

福岡:決めるの、絶対無理って2人で言ってましたからね(笑)。でも、いざ曲順を決める日になってみたら、意外と2時間ぐらいでまとまって。

橋本:ほぼ最初にはめたパズルのままで決まりましたね。

福岡:ただ、グループ魂の置きどころは最後まで悩みましたけど(笑)。

——それはものすごくわかります。

福岡:えっちゃんは1曲目を推してたんですよ。

橋本:そう、めっちゃ推してました! 面白さもあるし、楽しさとスピード感がすごかったから。

——下手するとアルバムのカラーを大きく左右しかねませんけども(笑)。

福岡:でも、グループ魂のあとに忘れらんねえよからの曲が届いて“これはもう絶対こっちやな、「ハナノユメ」で幕開けてもらおう”ってなったんです。そこからは“じゃあ次はどの曲がいいと思う?”って曲を挙げてみたら2人とも同じ曲だったり、いくつか候補があってもお互いに大体1曲はかぶってたり。そういう決め方をしていったら、けっこうトントンと決まりましたね。

——曲順通りに並べて聴いてみた印象は?

橋本:16曲って長いかなと思ってたけど、全然そんなことなくて。聴き始めたらあっという間でした。

福岡:私はクセがすごいと思いましたね(笑)。

——中毒性はたしかにあるかも。クセはすごいけど、何回も繰り返して聴きたくなる。

福岡:単に“ええ曲やな”だけじゃない、ちゃんとそれぞれのバンドの良さがすっごい出ているのもいいなって。2回目に聴いたらもうどのバンドがどの曲をやってるか、すぐにわかると思う。

——今回のトリビュートの制作は改めて自分たちの音楽と向き合う作業でもあったと思うんですけど、今作を通じてお2人はチャットモンチーの楽曲に対してどんなことを思われました?

橋本:歌詞先っていうのも大きいと思うんですけど、その時々のリアルが常に出てるって再確認しました。だからこそ送ってもらった音源を聴いて当時をすごく思い出すんだなって思ったし、常にそこと向き合ってるんだなって。

福岡:昔の曲は特にそうなんですけど、チャットの曲って最初に歌詞があって、それにメロを乗せて、最後に曲を付けるので、歌も楽器のようにアレンジが入り組んでるんですよ。歌詞を間違えたらバンド演奏も間違えるぐらい、お互いが密に繋がっているんですけど、今回初めてそれぞれを引きはがして聴けた気がして。ちゃんと歌モノだったんやなって……もちろん思ってたつもりだけど、改めてそう感じられたというか。ちゃんと歌モノとして成立してたんだなって。

——アルバムタイトルは『CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~』ですけど、当初はサブタイトルが“~I Love CHATMONCHY~”だったのを変更されたんですよね。それには何か理由が?

福岡:思ってた以上にみなさんの“My感”が出てるなと思ったんです。自分の曲として世に出してもらってもいいくらい、ちゃんとそのバンドのものになっていたっていうか。背景も見えるし、みんなそれぞれに“自分のもの”って思ってくれているんだなと感じたので。それに“I Love〜”だとなんかウチらに言わされてる感あるもんな(一同爆笑)。

橋本:あはははは! “だよね?”って(笑)。

——リスナーの方にはどんなふうに聴いてほしいですか。

橋本:でも、たぶん私たちがいちばん嬉しいから、申し訳ないなって思っちゃう(笑)。ただ、チャットが好きで参加アーティストが好きだったら絶対楽しいはずなので。

福岡:私たちはこれを聴くと間違いなく元気になれるんですけど、みんなもそうだったらいいなって思いますね。

——では次は、チャットモンチーが現在制作中のニューアルバムでファンのみなさんを喜ばせる番ということで(笑)。そちらの状況はどんな感じでしょう。

福岡:もう制作も佳境を迎えているので、間もなく完成すると思います。でも1年ぐらいずっと制作し続けてるから、それ以前の音源と聴き比べると全然違ってて自分たちでも正直ビックリしたんですよ。たぶん、今までのチャットでは全然ないアルバムになりそうです。

橋本:やっぱり人って新しいものを目にすると、それまでのものが過去に思えるんですよね。不思議なんです、自分たちでも。『変身』とか『共鳴』のときは“違う感”をバリバリ感じながらやっていたけど、今回は予期せぬぐらい“違う”っていうか。

福岡:チャットモンチーでやってるわけだから、そうは言ってもチャットモンチーになるやろって思ってたら、どうやら名前変えるぐらいの勢いで(笑)。

——ここにきて改名?(笑)

福岡:いや、さすがにそれはないですけど(笑)、ある意味、完結にふさわしいアルバムかもしれないですね。最後の最後まで最新というか、“今やりたいことはこれです”って言える感じにはなりそうだなって。

チャットモンチーインタビュー後篇
(トリビュートアルバム各曲解説)

M-1「ハナノユメ」 / 忘れらんねえよ

忘れらんねえよ

橋本:すごくチャットのことを好きでいてくれて、チャットを動画で観たのをきっかけに忘れらんねえよを組んだっていう話は前から知っていたから“きっとすごいのがくるんだろうな”って予想はしていたんですよ。もしかしたら歌いながら泣いてるくらい。そうだとしてもOKにしちゃうぐらいの熱さを持ってる人たちだと思ってたから、最初に聴いたときの印象もすごかったですね。

——やっぱり熱かったです?

橋本:うん。テイクの良し悪しではないっていう感じが溢れてました。『変身』のときの私たちのような雰囲気もちょっと感じました。

福岡:バンドのすごくいい空気感が入っているんですよね。受け取ってからボーカル&ギターの柴田(隆浩)さんに連絡したんです、“ありがとうございました”って。そしたら演奏も歌も全部一発録りだって言ってて。でもそのちょっとあとにベースの梅津(拓也)さんが脱退って聞いて、そんな大変なときにやってもらったんやと思ってまた連絡したんですね。そのときに“梅津とバンドをやるきっかけがチャットモンチーだったから、これが自分たちの最後の収録曲になって本当によかったです”って言ってくれて、ちょっと泣きそうになってしまって。

——チャットに始まりチャットに終わる。なんてドラマチックな。

福岡:そういう意味でも1曲目にふさわしい気がします。ただ、最後にめちゃめちゃ叫んでいて、それを聴いてるとこの1曲でアルバム終わるんちゃうかって気持ちにもなるんですけど(笑)。めっちゃ“さよなら”言うてるやん!って。

橋本:でもホンマ、ピッタリって思いました。改めて他の人が歌ったのを聴いたらグッとくるポイントが自分が歌ってるときと違っていて。これは“♪寂しさが”にすごくグッときたんですよ。もちろんメロディは高い部分なんですけど、特に自分では重きを置いていなかったので、そこが突出してグッとくるっていうのは自分の歌を聴いてもなかったことで。それは今回、発見でした。


M-2「Make Up! Make Up!」 / CHAI

CHAI

橋本:忘れらんねえよの熱さをフイッと塗り替えるというか、女子ならではの爽快さでサラッと入ってくるところに“よし!”って思うんですよ(笑)。なんかガッツポーズしたくなる感じがあって。

——このカバーの特に気に入ってるところってどこですか。

福岡:ひとりで歌ってないじゃないですか、これ。だから歌詞の聴こえ方が違うんですよ。女子代表というよりは、女子が団結して歌ってる感じ。もともとCHAIちゃんって女の子の気持ちとか、同年代の子の気持ちを歌っているから、私たちとはまた違う角度の女の子の歌に聴こえる気がするんですよね。さっき、えっちゃんも言ったけど、今っぽく曲が変身してるので“ありがたい!”って思いましたね。オシャレにしてくれて、きっと今の若い子たちも聴きやすいだろうなって。歌詞のないところに“♪make up! make up! ウェーイ”みたいな感じで、ノリで入れちゃった感じもかわいいし。ウチら、そういうのができないから(笑)。

橋本:私は“♪悲しい目の女は誰?”の抜けるところ。自分が歌ってるメロディと違うふうに聴こえて、すごく“らしさ”が出てるなって思うんです。


M-3「シャングリラ」 / ねごと

CHAI

——選曲が意外だったとおっしゃってましたが。

橋本:でも選んだのは意外だったけど、聴いたときは“まさに!”って思いました。同じレーベルの、直属の後輩がやってくれたぞって。ふわふわしてるのに堂々としていてすごく似合ってる。

福岡:原曲をかなりパワーアップさせてくれた印象がありました。間奏を長くしたりはしてるけど、構成自体はそこまでいじってないじゃないですか。でもリミックス感も入ってるし、自分で言うのはおこがましいけど、細かいところでリスペクトしてくれてる感じがすごく伝わってきて。そもそも「シャングリラ」なんてやりにくい曲だと思うんですけど、よくぞやってくれたなって。

——代表曲中の代表曲ですもんね。

橋本:しかもサラッと泥くさくなくやってくれてるから。

福岡:サビも変に頑張ってないっていうか……“♪胸を張って歩けよ”のコード感がすごく好きなんですよ。ここで後輩の意地を見せてきたかっていう(笑)。すごく好きですね、完全にねごとの曲になってるのが嬉しかったです。


M-4「初日の出」 / People In The Box

People In The Box

橋本:ヤバいです、これは。この曲を選んだっていうところからしてヤバい(笑)。でもメロディを自分の頭の中で思い出してみたときにPeople In The Boxでも全然歌ってそうな曲やなって思ったんですよ。“♪我らが進んでいるのだ”の辺りとか波多野(裕文)君が歌ってる感じがすごく想像できたんです。

——間奏に「世界が終わる夜に」のフレーズを入れてくるあたりとか、アレンジの変態性はずば抜けてますよね。

橋本:くみこんも今回の音源は全部聴いてるんですけど、めっちゃすごいって言ってました。

福岡:何より音がめちゃくちゃ良かったですね。あと、コード進行のカッコよさ。これもそれほど構成は変わってないのに、すごいドラマチックにしてくれて。そのあとのリフも効いてくるし“ピープルだったらこうする”っていう技が前面に出てますね。波多野さんにもお礼の連絡をしたんですけど“「(チャットモンチーの)求愛ツアー♡」(2011年)で対バンしてもらったときの印象で僕らもバンドを続けられてます。なので全力でやらせてもらいました”っていう内容のことを言ってくれて。同じ世代のバンドの人たちとそういうふうに影響し合えてたんやなって思って嬉しかったし、そこでこの曲を選んでくれたっていうところにも同世代感を感じましたね。

橋本:ちょっとツンデレっていうか、“ツン”ってしてる部分と寄り添ってくれてる部分が一斉に押し寄せてくるんですよ、ピープルって。だから惹き込まれちゃうんでしょうね。なんだろう、曲から人格を感じさせるっていうか……この曲もすごく魅力的だと思います。


M-5「惚たる蛍」 / Homecomings

Homecomings

橋本:これもHump Backを聴いたときのような気持ちがしましたね。原曲とアレンジは違うのに、雰囲気かなぁ? なんだか自分たちの昔を思い出しましたね。でも一方で、今の時代の雰囲気にしてもらえたというか、モノクロをカラーにしてもらったみたいな気持ちもしたんです。昔の気持ちはそのままで彩りをつけてくれた、みたいな。

福岡:「惚たる蛍」自体、すごく久々に聴いたけど、いい曲やなって思わせてもらいました。参加してくれたバンドの中でもいちばんチャットっぽいんじゃないかな。似てる部分を感じたのが昔を思い出す要因じゃないかなと私は思ってて。Hump Backの場合はもともと勢いのある曲も多いから「湯気」を選ぶ感じはすごくわかったんですけど、Homecomingsってたぶん普段はあんまり日本語で歌ってなくて、歌詞というより楽曲そのものの感じをすごく大事にしてる人たちだと思うんですよ。でも、ちょっとひねくれたアレンジというか、そういうところが似てるんだろうなって。


M-6「こころとあたま」 / ペペッターズ

ペペッターズ

——一般公募枠からの1組目ですね。彼らのカバーを選んだ決め手ってなんだったのでしょうか。

橋本:このトリビュートには名のある人たちが大勢参加してくださってますけど、この人たちならそこに入っていてもおかしくないなって思ったんです。アレンジもいいし、実際に並べてみたら同じようなことをやってる人たちがいなかったんですよ。例えばAメロの裏のギターとかまったく別モノとして存在してるというか完全に自由なのに、曲としてはまとまってる。それがすごいなって。最初に聴いたときも“なんかすごい!”ってなったんです。

福岡:圧倒的にアレンジがよかったっていうのがいちばんで、あとすごく誠実なところ。私たちのカバーをするということに対してめちゃくちゃ誠実に向き合ってくれてるのを感じて。3ピースやけど細かい音とかめっちゃ入れているのに少しも力んだ感じにしていないっていうところに“めっちゃ好き!”を押し殺そうとしてる感じが垣間見えてグッときましたね。どんだけ高い声出してんねん、みたいなところも含めて(笑)、全部すごいなと思いました。


M-7「バスロマンス」 / YOUR SONG IS GOOD

YOUR SONG IS GOOD

——今作唯一のインストゥルメンタル曲です。

福岡:ユアソンに関してはメンバーをよく知ってしまっているから、聴いていても顔がずっと浮かぶんですよ。

橋本:叩いてる姿とか(笑)。

福岡:そう、叩いてるのとか吹いてるのとか、ずっと浮かんできてホロッとなりましたね。しかも、こんなに送り出してくれるような曲調にしてくれて。昔、一緒にお仕事させてもらってたんですけど、それをすごく思い出させてくれる。鍵盤ハーモニカがメロディってやっぱりズルいですよ。

橋本:哀愁がまとわりついてるからね、音に。

——歌ってる感じがありますよね。

橋本:そうなんです、人っぽい。でも私はこのアレンジは意外でした。絶対に原曲に近いビートのインストが来るのかなって思ってたんですよ、最初。むしろもっと速くした、ちょっとラテンっぽいリズムがずっと続いてトランス状態になるような、まさにユアソンのライヴみたいなアレンジでくると思ってたら、こんなにやさしい仕上がりなんて。めっちゃ度肝を抜かれましたね。


M-8「きらきらひかれ」 / フジファブリック

フジファブリック

福岡:すごい感動しました。同じ事務所の先輩なんですけど、普段は会っても、そんなにたいした話をしないんですよ(笑)。“忙しそうやなぁ”とかお互いに心配し合う、みたいな。

橋本:あと、干し芋の話(笑)。前にたまたま隣同士のスタジオになったときにお母様が送ってくださったっていう干し芋をお裾分けしてくれて。

福岡:“昔、好きだったのをおかんが覚えてて、いつも送ってくんねん”みたいな(笑)。そういうホンワカさせてくれる先輩なのに、いざ音楽が絡むとこんなふうに来るんだと思って、めっちゃ感動したんです。

——こんなふうに、というと?

福岡:もう“先輩!”って感じ。カバーというよりフジファブリックの曲になってたし、自分たちの曲なのに泣かされそうになったというか。男の人が歌ってるのもあって歌詞の印象も全然違うんですよね。それなのに私たちのリフも大事にしてくれて、溜めてサビに入るところとかもさらに格好よく再現してくれてたり。ホンマ“ありがたい!”のひと言に尽きますね。あの頃の尖っていた私たちでは出せなかった大きく包み込む感じ、男性ならではの説得力にじんとさせられました。

橋本:“♪光れ”の“れ”に上がる瞬間とか“♪あたりまえなど”のところとか、歌い方もめっちゃフジファブリックだし、たぶんこれを選んでくれたこと自体が先輩からのメッセージなんじゃないかなって。歌詞の内容とかも含めてチャットにはなむけの言葉を贈ってくれてるのかなって思いながら聴きました。


M-9「世界が終わる夜に」 / 集団行動

集団行動

福岡:この曲も歌詞は暗めじゃないですか。それをボーカルの齋藤(里菜)さんがわりと明るい声で、置いてくるように歌ってる感じが集団行動っぽいなって。私たちの曲って歌詞が先にあって、そこにえっちゃんがメロディを付けて、そのあとに曲を付けるっていう形でやってることもあって、あんまり全部の熱量を高くし過ぎないようにしようっていう意識が3人のときも、2人になってからもあるんですよ。その感じがモロに出てるバンドだなと思いました。感情的にはしてないけど、そこで逆に惹き込まれるというか、訥々とすごいこと言ってるな、みたいな。

橋本:私は歌ってるというよりは語りをずっと聴いてるように感じたんですよ。なんて言うんだろう、それが歌になるんや!っていう驚きがあったというか。確実に私にはないものなので、これも発見でした。


M-10「真夜中遊園地」 / 川谷絵音

川谷絵音

福岡:一般公募の告知をしたときに、川谷さんがツイッターで“応募しようかな”ってつぶやいてくれてたんです。それを見たディレクターのKさんが直接オファーしてくれたんです。えっちゃんはこのカバー、めっちゃ意外って言ってたよな。

橋本:うん、意外でした。チャットで言うと「真夜中遊園地」ってライヴで絶対盛り上がるような、わりと泥くさくて骨太な部類の曲なんですよ。それを川谷さんが選ぶんやっていうのがまず意外で。

——もっとオシャレな曲を選んでもおかしくないのに、って?

橋本:そう、バラードとか。でも声とサビの感じはすごく合ってましたね。あと、めっちゃ真夜中になったなと思ったんですよ。めっちゃ真夜中の遊園地や!って。実は「真夜中遊園地」ってタイトルを付けてるわりに、なぜか自分の中ではあんまりこの曲に対して夜感がなかったんです。こんなに夜っぽいワードとかも出てくるのに、曲の勢いとか、そっちのほうにイメージが寄ってたのかもしれなくて。今回の川谷さんのアレンジはブラスが入ってることもあって、かなりナイトな雰囲気が出ているのが嬉しかったです。

福岡:今回の16曲の中でいちばん大人っぽいんじゃないかな。夜の雰囲気も込みで、『生命力』のときの曲とは思えない渋さが出たなって。今の年齢で作っていてもおかしくない曲というか。


M-11「湯気」 / Hump Back

Hump Back

福岡:すっごい好きでいてくれたんだなっていうのが伝わってきました。バンドの編成からしてもそうやし、彼女たちの曲を聴いてもどこか感じるものがあるし、それをストレートに出してくれてるのも嬉しくて。なにせ、やり慣れてる感がすごかった。たぶん、相当やってたんじゃないかな。

橋本:この歌詞は10代の頃にくみこんにもらったものなんですけど、くみこんが地元で通ってた塾の歌を今、彼女たちがめっちゃ真剣に歌ってるって考えたらすごいなと思えたんです。絶対知らないはずの光景、私でさえも見たことない光景なのに(笑)、彼女たちはチャットを好きになってくれて、曲を好きになってくれて、カバーしてくれてるわけで。しかもそれがこのトリビュートに入るって奇跡的やなと思ってしまって。だって……“やかん”とか言うかな? 今の若い人って。

福岡:……“ケトル”?

橋本:そうや! ケトルだよね、絶対(一同爆笑)。

福岡:でも、もしかしたら目線は当時の私たちに近いのかもしれないですね。その光景を知ってるとか知らないじゃなくて、チャットがやってる曲だからっていうことだけを前提に、曲に真剣に向き合ってくれて。結果、この曲もモノクロをカラーにしてもらえた感じがすごくします。でも普通にツッコんでくれても面白いですけどね、“壊れかけた戸”ってなんやねん!とか(笑)。


M-12「恋愛スピリッツ」 / グループ魂

グループ魂

橋本:これはまず曲がヤバいし、(港)カヲルさんの声もヤバいし、アレンジもすごいし、勢いも……。

——さらにはコントまで挿入されてますからね、1曲の中に。

福岡:曲自体はできていて、最後にコントの収録だったんですけど“こんなにいい曲に仕上がってるのに、なんで途中でがっつり切ってまでコントを入れるんだろう?”って思ってしまうくらい(笑)、ただでは終わりたくないっていう情熱を感じて。でもきっと、それがグループ魂なんですよね。“いつもこうやって作ってるんやな”って感動しました。

——コントにはお2人も参加していますが。

福岡:コントは一発録りだったんですよ。マイクの音量チェックをしてから普通にやったら、宮藤さんから一発でOKが出て。ただ、私たちに関しては演技ができないので何も言われなかったんですけど、カヲルさんには“もうちょっと酔っぱらって2人を口説く感じで”っていうオーダーが入って。でも、それだけの注文だったのに、カヲルさんがすぐ見事にやれるのがすごいなと思いましたね。

橋本:めっちゃ面白かったです。緊張感を解き放ったときに人は笑うっていう原理がここにはかなりあるなと思いました。ここで笑いを使えるんやっていうのも新鮮な発見でしたし。目線がもう私たちと全然違うんです。

福岡:コントを入れたあと、曲に戻ってくるまでの秒数をめちゃくちゃ細かく調整してるんですよ。“う〜ん、あともう一拍だな”とか言ってて、みんなそれぞれにカッコよさのポイントがあるんだなって思いましたね。


M-13「余談(スチャットモンチーver.)」 / スチャダラパー

スチャダラパー

——これは他の15曲とはちょっと毛色が違いますね。純然たるカバーというよりはリミックスに近いというか。

福岡:原曲のトラック素材を使って、この形に仕上げてくれたんです。だからカバーなのに、いきなりえっちゃんの声が入ってくるっていう(笑)。でも、その感じもスチャダラパーっぽくて、なのにラップパートに入ると安心感がすごいんです。スチャ兄さん、自分たちの責任編集で『余談』っていう雑誌を作っているんですけど、たぶんそれと絡めてこの選曲にしてくれたんだと思うんですよ。そういうところにもグッときますし。

橋本:スチャダラパーを見たり聴いたりしていると、いろんなことを全部肯定できるというか、ポジティヴになれるんですよね。この曲でのワードの選び方とかも、めっちゃBoseさんとANIさんの感じが出ているのがよくて。もうね、グループ魂のあとを任せるのはスチャ兄さんしかいないと思って、願いを込めながら音源が届くのを待ってました(笑)。そしたら願い通り、ガラッとまったく違う空気に変えてくれて。

——グループ魂からスチャダラパーって異様に濃い並びですけど(笑)。

福岡:もはや実力テストも放棄して答案用紙の裏に絵とかめちゃくちゃ上手に描いてる人みたいですよね(笑)。そっちで100点あげたくなる、みたいな。やっぱり上にはすごい人たちがいっぱいいるなって思い知らされます。


M-14「染まるよ」 / きのこ帝国

きのこ帝国

橋本:まず“うわ、全然大人!”って思いました。なんていうんだろう、自分が出せていなかった部分をこのカバーでは出してもらっているのが“いいなぁ”って思ってしまって。

——ちょっと悔しい、みたいな?

橋本:めっちゃ難しいんですよ、この曲。転調してからのキーがまた高いんですけど、そこで苦しそうに見せたら終わりってわりと思ってるところが私にはあって。もっと余裕でそこまでいけたらいいのにっていつも思うような曲だからなのかな、“いいなぁ”っていうのは。

——たしかに絵莉子さんが歌う「染まるよ」とはまた違ったエモーションを感じます。

橋本:そうなんですよね。大人っぽさと切実さのバランスが難しくて、どっちかに寄り過ぎるともったいない曲なんですけど。

福岡:空気感がいいなって私は思いましたね、原曲以上の広がりがあって。この曲をチャットでやってるときって歌もそうだけど、演奏もかなり緊張感があるんですよ。ハネてるようでハネてない、みたいな絶妙なグルーヴを最小限の音でやっているから、すっごい緊張感があるんですけど、きのこ帝国のカバーはまったく緊張感を感じずに聴けて。“カラオケでよく歌ってました”ってアルバムのブックレットでコメントしてくれてるから、きっと歌い慣れてるんでしょうね。ちゃんと自分の歌い回しにしてる余裕も感じられて。

——さっきの濃いパートからここにくると、ちょっとホッとしません?

橋本:する! なんかね……怖くない(笑)。濃さをここでしっかり受け止めてくれているところも“頼れる!”って思いました。


M-15「小さなキラキラ」 / 月の満ちかけ

月の満ちかけ

——こちらは一般公募枠の2組目になりますが、アレンジがとにかく素敵でした。歌と鍵盤だけでこんなにふくよかな世界が生まれるんだなって。

福岡:ほぼキーボードと歌だけですもんね。でも“こうやりたい”って意志を感じるコード進行とか、こんなに少ない音数でアレンジの方向性を示せるのがすごいなと思って。結成3ヵ月で応募してくれたんですけど、これだけで十分満ち足りてるというか、足し過ぎないっていうことを3ヵ月ですでに知ってるのがすごい。

橋本:凝り固まった感じがしないんですよ。こんがらがってないというか、ホントにナチュラルにこの曲がやりたくて、じゃあこうしよう、みたいな感じで進んでいったんじゃないかなって思わせるような。辿り着くべきところは定まってるんだけど、そこに行くまでの道を狭めてないっていうのかな、“やってたらこうなったんです”みたいな、ちょっと淡々としたところも魅力だし、こんなにバラードな曲なのに湿っぽさを全然感じない、むしろカラッとしてるのもいいんですよね。

M-16「東京ハチミツオーケストラ」 / ギターウルフ

ギターウルフ

橋本:これはもう誰しもが“すごい!”と言うでしょう(笑)。

福岡:度肝を抜かれましたから、ホントに。最初は歌詞とか大丈夫かなって思ってたんですよ。ところどころ微妙に歌詞を替えてくれてたり、どうやって拍を取ればその譜割になるんだろう?っていう歌い方をしてるところもいっぱいあるんですけど“♪東京”っていうワードとかはすごいしっかり歌ってくれていたりとか、もうカッコよ過ぎました。それからソロパートには泣きましたね。ギターソロ、やってくれてる!って。

橋本:ちゃんとコピーしてくれてるんです!

福岡:ギターウルフにギターソロをコピーしてもらえるなんて。

橋本:最初は意外な選曲やなって思ったけど、ホント予想以上のものがきましたね。アタマで♪ジャガジャーンってギターが鳴った瞬間、“うわ〜!”って。

——ラストをこの曲で飾るというのは2人とも即決だったんでしょうか。

福岡:はい。「ハナノユメ」とこれはほぼ最初に決まりました。

橋本:これしかない!って(笑)。

インタビュー:本間夕子

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